もくじ
300B真空管シングルアンプについて
300Bは、真空管の最高傑作と言って間違いないだろう。
300Bは、1930年代にアメリカのウェスタン・エレクトリック社が開発した伝説的な真空管だ。オリジナルはもう生産されておらず、ネットオークション等で数万から数十万で取引されている。
現在では、他の各社から生産されており、高槻等一部日本製も頑張ってはいるが、プスバンをはじめ中国製が多い。
そんな憧れの300Bの真空管アンプ音を一度は聴いてみたい。所有してみたい。というのが男のサガである。
既製品の300Bアンプは、マッキントッシュ、トライオード等々から販売されてはいるが、価格は、20万、30万は普通にするし、給料人に手に届くようなものではない。
そんな中、メルカリで目にしたのが「はじめての真空管アンプ」という自作アンプ製作のための本だった。
1200円くらいだったと思う。結構、高いと思いつつ300Bの憧れからポチっと押してしまった。
この1000円の本から本当に300Bの真空管アンプの製作ができるとは思ってはいなかった。
しかし、この本通りに製作したら素人でも完成させることができるのは事実である。
この本の内容は、電気の話やら、真空管の構造やら、回路図の読み方だの色々書いてあって勉強になる。作成した後の、トラブル対策についても記述されており、初心者に優しい本である。
まあ、色々書いてはあるが、この本で紹介されている設計図通りに作れば、真空管に対する深い知識がなくとも作成することが可能だ。オレができたのだから間違いない。
この書籍は、廃盤になっているが、新版が出ているらしい。中身が気になるところだ。
300Bス真空管テレオアンプ完全製作記
部品調達
書籍「はじめての真空管アンプ」の中に、使用部品が全て網羅されています。
その部品表を元に、部品調達をします。私がよく利用したお店は下記の通りです。
- マルツオンライン:色々な電気・電子パーツが揃っています。
- 春日無線:各種トランス、アンプキットがおすすめ。
- ゼネラルトランス:電源トランス、シャーシがおすすめ。
- 門田無線:真空管ソケット、スイッチ、ボリュームツマミがおすすめ。
- 秋月電商:電子パーツ全般(安くていい。)
- 千石電商:電子パーツ全般
- ビスパ:電子パーツ全般
- Aliexpress:300B真空管(中国格安通販サイトで電子パーツも結構あります。)
- その他:ヤフオク(ビンテージパーツ等)
部品調達は、すごく歯がゆい思いをします。
お店はいっぱいありますが、お店ごとに扱っている商品が異なりますので、一つのお店で全部調達することは不可能です。
ですから、パーツ選びは若干妥協しなければならないところが出てくると思います。(送料とか考えないなら問題ありませんが、送料もバカになりませんしね。)
中には、生産終了している部品等があるかもしれませんが、ここはネットの検索力を最大限活用します。私の場合は、EC86という品番の真空管が生産終了になっていたので、ヤフオクで購入しました。
以下に私が調達した部品の概要について紹介します。
・マルツオンライン:コンデンサ1,647円、ラグ板 4,492円、その他各種部品1,7717円
・春日無線:出力トランス(タムラ)51,559円
・ゼネラルトランス:電源トランス 18,144円、シャーシ 4,500円、 チョークコイル6,500円
・門田無線:ソケット7,032円
・Aliexpress:真空管13,999円
・ヤフオク:真空管(EC86)1,700円
・ビスパ:1,450円
合計128,740円
128,740円!!!
普通に既製品の真空管アンプが買えるではないか!と思った方も多いいと思います。
部品で一番高いのはトランス類と真空管です。その他の電子部品は本当に安いです。
色々とネットのお店でパーツを物色していると、いいパーツが欲しくなってしまします。
特に、出力トランスは、音質に大きく影響するなんて聞いてしまえば、いいものを買わずにはいられません。
この出力トランスに拘ってしまったがために、自作なのに12万円を超えてしまったのです。
しかし、このスペックのアンプを既製品で買うとなると35万くらいはするのではないでしょうか。
設計図作成
①回路図に従って実線図を作成
書籍「はじめての真空管アンプ」の中に、設計図が掲載されています。
その回路図を元に、配線をし易くするために配線のレイアウトを作成しました。
②実線図をパソコン(パワーポイント)で作成
この配線のレイアウトは一回では当然書けません。何度か修正が必要になると思います。
手書きの場合、何度も書き直さなければならないので、途中からPCで作ることにしました。
PCで作成した場合、何度も修正できるので便利です。
ちなみにアンプの構成は、電源部と左右の増幅部という単純な構成となっております。
C15とかR12とかVRとか難しそうですが、Cはコンデンサで、Rは抵抗、番号は一連の番号で、番号ごとにパーツの値(mF、Ω等)が決まっています。
基本的には中学生で教えてもらったオームの法則(V=RI)を知っていればなんとかなると思います。
③方眼紙でレイアウトを作成
配線する前に、シャーシーの加工を実施します。
まずは、どんなレイアウトにしたいのかイメージします。
私は、左右対称的なデザインが好きですので、左右均等に300Bを配置して、後ろに、トランス類を配置しました。
トランスの穴の配置については、各トランスを購入すると取説がありますので、そこに詳細な寸法等が記載されています。
シャーシーが小さい場合など真空管とトランスの間隔が狭いと雑音の原因になるようです。
対策は、ネットでも参考となる対策が色々紹介されていますので割愛します。
私の作成したアンプは、全くと言っていいほど雑音は気になりませんでした。
作業開始
④シャーシの加工
これが一番のきついかもしれません。難しくはないのですが、とにかく疲れます。工具は高ければ高いほど楽にできます。
私の場合は、工具をケチったせいでかなり苦労しました。
加工方法は、まず、シャーシの上に作成した方眼紙のレイアウトをのせて、尖ったもので刺して印をつけます。
角穴をドリルで落としてからダイソーのヤスリでガリを綺麗に落とします。
⑤配 線
この作業は、楽で一番楽しいかもしれません。
配線方法は、回路図と配線レイアウトを何度かマカーを使用して間違えを確認します。
この確認が非常に重要です。書籍に書いてある通りに配線すれば、絶対に完成できるはずです。
間違えるとすれば、配線間違いと配線レイアウトの書き間違えくらいでしょう。
私は、書籍の配線図と作成した配線レイアウトをコピーして、相互に見比べながら何度か配線チェックを行いました。
配線する前に作成したレイアウトに元に配線しても、思ったようにいかないもので、配線のレイアウトの見直しも出てくると思います。その時は臨機応変に対応しましょう。
配線していると、調達し忘れた部品というのも出てきます。
私は、220μFの電解コンデンサ1個を買い忘れていました。
それから、半田付けに慣れていないと、部品を損傷して、再購入なんてこともあります。
私は、100μFのコンデンサを半田付けするときに、コンデンサにコテを当てすぎたためか液体が出てきてしまい再購入しました。あらかじめ予備を購入しておくのもいいかもしれません。
配線は、「書籍に書いてある通りに配線する」ことができればクリアできるはずです。
⑤配線完了 初点火
いよいよ点火です。点火前の配線チェックはやり過ぎることはありません。
何度もチェックすることをお勧めします。
配線間違えにより、高価な真空管やトランスに損傷を与える恐れがあるからです。
私も初点火したとき音が出でなかった時はかなり動揺しました。
冷静に原因分析に努めましょう。書籍には、トラブル対策も掲載されているのですごく参考になりました。
音が出ないので、色々ためしてみました。ボリュームをあげるとかすかに音がします。
スピーカーからは全く音が聴こえません。300Bに耳を近づけると、真空管自体から音が聴こえてくるではありませんか。
もう一度配線をチェックすと、スピーカーターミナルがアースされていないことが原因だと判明しました。
アースの処置を済まして、ようやく完成することができました。
肝心の音質の方はどうだったかといえば、なんとなく乾いたような音で6bm8超三結アンプ(過去に製作した第一号真空管アンプ)とさほど変わらないと言った印象でした。
見た目は、下の写真のとおりです。自分で考えた真空管とトランスの配置とデザイン。自分でいうのもなんですが、素晴らし過ぎる。ボリュームとトグルスイッチもなんともいえません。
カスタマイズ
音に若干の不満があったので一号機に付いているアムトランス オイルコンデンサを取り外し、カップリングコンデンサを交換してみました。
電源とブリッジダイオードも音質に影響するとのことでしたので、秋月電商で電源ノイズフィルター500円と超高性能ブリッジダイオード540円を購入し装着しました。
自作の醍醐味は、自分好みにカスタマイズできるところだと思います。
カップリングコンデンサをスプラグのブラックビューティーに変えてみました。これがかなり効果があったように思います。
1ヶ月くらいすると部品が定着して音質が安定してきます。
これまでによく聞いていたBASSフルのドンシャリの音とは異質です。
素直な輪郭のはっきりした音質です。
脳みそを刺激する桃色の艶やかな音。
なんと素晴らしいことなんでしょうか。
この感動を是非体感してください。